2種類の「頭痛」
頭痛に悩まされている方は非常に多くいらっしゃいます。このなかには頭が痛いとされる症状自体が病気と考えられている「一次性頭痛」と何らかの病気によって頭痛が引き起こされる「二次性頭痛」があります。頭痛で来院される方の多くは命に影響はないとされる一次性頭痛ですが、くも膜下出血や脳出血などの二次性頭痛によるケースもあります。
一次性頭痛(脳に病変がない機能性頭痛)
繰り返し起きる頭痛が一次性頭痛となり、慢性頭痛と呼ばれ、頭痛そのものが治療対象となり、主に3つのタイプ(片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛)に分類されます。これらは画像では診断できなかったり、本人にしか痛みがわからず辛い頭痛かと思います。ただ、脳自体に異常があるという事ではないため、社会的に軽視されてきました。頭痛という自覚症状のみから診療することは難しいですが、当院では科学的知見に基づいた診断と治療を行っていきます。
片頭痛の原因と治療法
片頭痛は頭部の血管が拡張し、炎症を起こして痛みが発生します。人間の体のリズムや睡眠、体温調節など環境変化に対応するために重要な役割を果たすセロトニンという脳内物質が関連し、日常生活や人間関係の中でのストレスなど、その心と体のリズム、バランスを支えています。片頭痛の症状は頭の片側または両側が脈打つように痛み、吐き気を伴うことが多く、光や音に過敏になる随伴症状がみられることもあります。目の前で光がチカチカするなど前兆を伴う場合もあります。また、片頭痛の原因に体質、遺伝もあげられ、片頭痛になりやすい遺伝子に様々な要因が引き金となっている場合もあります。
治療については激しい頭痛症状がある場合、薬物治療が中心となります。アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬、トリプタン製剤など重症度に応じて使い分けを行います。強い頭痛がある場合は嘔吐・嘔気を伴い内服製剤が服用できない場合がありますが、剤型は内服剤に加えて、点鼻、注射製剤があります。
薬物治療で注意すべき点として自己判断での市販薬の乱用があげられます。つらい頭痛に手っ取り早く市販薬で済ませてしまうと脳内に病変が潜んでいる事に気づかなかったり、薬物が病変(頭痛)の原因になっている可能性もありますので注意が必要です。
二次性頭痛(脳に病変がある器質性頭痛)
二次性頭痛のなかには脳卒中や脳腫瘍などのように、命に直結する疾患も含まれています。下記のような症状がみられたときはすぐに医療機関を受診してください。気になる頭痛があればすぐに検査を受けることが重要です。具体的には、くも膜下出血、脳内出血、脳腫瘍、髄膜炎、高血圧症、頚椎症、副鼻腔炎、緑内障、うつ病、心身症、薬物乱用頭痛などがあります。
- こんなときは早めの受診をお奨めします
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- 頭痛が突然現れた
- これまで経験したことのない頭痛に襲われている
- 頭痛の様子がいつもと異なる気がする
- 頭痛の頻度と程度が増している
- がんや免疫不全の病気に罹患している患者さま
- 精神症状がある患者さまの頭痛
- 項部硬直や髄膜刺激症状がみられる頭痛 など
当院で取り扱う「CGRP」頭痛薬剤
当院で扱っている頭痛薬剤は【片頭痛発作治療薬エムガルティ】【片頭痛発作治療薬アジョビ】【予防治療薬アイモビーグ】となります。
片頭痛発作治療薬エムガルティ
日本国外では既に使用開始されている『片頭痛予防治療薬エムガルティ』が使用可能です。多くの患者さまが治療されています。
治療方法
エムガルティは初回に2本、以降は1カ月間隔で1本注射することで効果を発揮します。
エムガルティは初回に2本(ローディングドーズ※)、2ヵ月目から1ヵ月毎に1本投与となります。ローディングドーズ投与によって初回投与後に速やかに血中濃度が定常状態に到達することが期待でき、早期から効果を期待できます。その後は月1回の皮下注射を継続していきます。
※ローディングドーズとは初期投与時に1回投与量や1日投与回数を増やすことにより、早期に目標とする血中濃度に到達させる為に実施されます。
報告されている効果
- 注射翌月より頭痛日数が約半分に。
- 1カ月あたりの片頭痛日数が60%の患者で発作日数が半減、30%が75%減、10%の発作が消失。(6カ月平均)
- 片頭痛発作時の痛みの重症度が軽減されたり随伴症状※が改善。
- 急性期治療薬の使用日数が少なくなる、急性期治療薬の反応性が高まる
(※随伴症状として光過敏、音過敏などが発生する場合あり)
片頭痛により日常的に家庭、仕事、学校・職場にて支障を感じられている患者さまも多く、頭痛が起こる事で仕事の効率が悪くなったり、頭痛のために仕事を休んでしまうだけでなく、頭痛がない「発作間欠期」においても、集中力低下、疲労感、イライラ感、睡眠障害、未来への頭痛発作への恐怖から、日々の生活に多くの支障を抱えています。エムガルティを投与することで、発作がある時だけでなく、発作がない時(発作間欠期)の支障も改善されることも期待できます。
投与方法
エムガルティは在宅自己注射にて治療を実施いただくお薬になります。自己注射と聞くと自分でもできるかなと不安に感じる方もいますが、多くの患者さまが自己注射をおこなっております。慣れるまで当院スタッフがサポートさせていただきます。症状が安定すれば、2カ月や3カ月処方も実施でき、通院に縛られずに治療を実施できるメリットがあります。
片頭痛発作治療薬アジョビ
アジョビは、硬膜血管周辺及び三叉神経節においてCGRPに対して選択的に結合することで、CGRPの2つのアイソフォーム(α 及び β-CGRP)とCGRP受容体との結合を阻害し、三叉神経系の活性化を抑制すると考えられています。
予防治療薬アイモビーグ
片頭痛の病態形成に中心的役割を果たすカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の受容体を選択的に阻害する唯一の完全ヒトモノクローナル抗体製剤です。
治療方法
4週間に1回1本を皮下に注射します。(注意:ラテックスアレルギーの方は使用できません)
副作用について
先行販売された海外で5年間投与の安全性の結果が報告されています。
主な副作用は便秘(1.5%)、傾眠(1.1%)などがありますが、軽症のことがほとんどです。
投与期間について
投与開始後6カ月で効果判定を行います。効果がない場合や頭痛が改善し日常生活に支障がない場合は投与中止を検討します。
妊婦への使用について
妊婦への安全性は検討されていません。
ヒトIgG抗体は胎盤を通過します。臨床用量の40倍の曝露量で実施した生殖発生毒性試験(サル)において、妊娠、胚胎児又は出生後の発達(生後6カ月まで)に影響は認められませんでした。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとなっています。